あの一夜で身ごもりましたが、結婚はいたしません ~天才心臓外科医の猛攻愛~

 近くで栄斗の声が聞こえて、はっと我に返る。

 私たちが勢いよく体を離すと、間に不機嫌な顔の栄斗がやってきた。

 大きな目で瀬七さんにじっとりとした視線を注いでいる。

 「ままをまもってって、いったけど。ままはぼくのままだもん。ちゅーしちゃだめだよ」

 「えっ……?」

 栄斗の独占欲全開の言葉につい目を白黒させていると、瀬七さんはくくっと喉奥で笑う。

 「ごめんな、栄斗。ママを奪ったりはしないよ。これからは俺も一緒に、ママを守らせてくれるか?」

 「うんっ! それならだいじょうぶ!」

 栄斗は瀬七さんの提案に笑顔でうなずき、彼の腕に飛びつく。

 もうすっかり自然に親子に見えて、自然と頬がほころんだ。

 瀬七お兄さんが本当のパパだって知ったら、栄斗、喜ぶだろうな……。

 すると振り返った瀬七さんは、私の耳元に唇を寄せてくる。

 「ママは栄斗のものだが、ひかりは俺のものだ」

 「っ!」

 囁かれた甘い言葉に、全身が一気に熱くなった。

 そんな私をからかうような目で笑い、余裕たっぷりに彼は笑う。

 どこまでも優しくて、私にだけ意地悪な彼との生活が始まる。

 そう考えると楽しみな反面、少しだけ不安だ。

 限りなく、一生使って彼に恋してしまいそうだから――。
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