筋肉フェチの公爵令嬢とムキムキ辺境伯の純愛スローライフ
 王太子殿下と運命の恋に落ちた伯爵令嬢の結婚式。国中の貴族達はもちろん、各国の要人も参列している。きらびやかな正装で着飾った客人達の波は、今日の佳き日をさらに華やかにしている。

 しかし、ベアトリスの周りだけは、彼女を気遣うような視線や空気で溢れていた。我が国の筆頭貴族であるスペンサー公爵家の令嬢、ベアトリス。彼女が王太子殿下の婚約者候補の筆頭だったからだ。
 ベアトリスは王太子殿下の妹君とも仲が良く、王宮によく通っていた為に、王太子殿下との婚約も秒読みだと思われていた。そこに突然現れた弱小貴族の伯爵令嬢と王太子殿下が恋に落ち、スピード結婚したのだ。ベアトリスは、さぞ失恋に胸を痛めているのだろうと、周りは彼女を気遣っていた。

 だがベアトリスの心中は全く違った。

(わあー! あの上腕二頭筋! 素敵だわ)

 参列客の筋肉に夢中だった。

(服の上からでも鍛えているのが分かるわ! 素晴らしい筋肉!)

 ベアトリスは長年、王太子と政略結婚させられそうになるのが嫌で嫌で仕方がなかった。だが、その重荷も見事なくなり、これからは恋愛結婚の時代が到来するに違いない!
 理想の筋肉と出会って、田舎でのんびり暮らしたい──。

 公爵令嬢として生まれて、叶わないと思っていた願いが叶うかもしれない。

 ベアトリスは理想の筋肉を夢見て、参列客の筋肉を眺めては胸をときめかせていたのだった。
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