私が一番あなたの傍に…
「幸奈さん、早歩きですね」

すぐに指摘された。もしかしてゆっくり歩きたかったかな?自分の気持ちばかりが先行し、愁の気持ちまで考えていなかった。

「ごめん。つい気が急いてしまって…」

私はいつも気持ちばかりが焦ってしまい、ちゃんと周りが見えていない。
もう少し落ち着いて行動できるように、もっと緩やかな気持ちでいることを心がけようと思う。

「いいよ。俺も同じ気持ちだから。早くモールに着いて買い物したいね」

優しい微笑みを私に向けてくれた。その微笑みに私は一瞬で心を鷲掴みされた。

「…幸奈?どうした?」

私がぼーっと見つめていたせいか、愁が不思議そうな顔をしていた。
私は慌てて視線を外した。そしてすぐに言い訳をした。

「えっと…ごめん。愁の笑顔が素敵すぎて見蕩れちゃって。つい……」

思わず本音を漏らすと、すぐに愁の顔が真っ赤になった。
そしてすぐに手で顔を覆い、照れ隠しをした。

「お、おう。それは嬉しい。ありがと…」

愁の照れ隠しに釣られて、私まで照れてしまった。
恋人が不意に見せる魅力は、破壊力が大きい。一瞬で心を奪われてしまうのだから。

「いえいえ…。それならよかったです」

お互いに恥ずかしすぎて、沈黙が流れた…。
でもこの沈黙も悪くないなと思った。無言でも一緒に居られる関係ってすごく楽だ。
ふとしたことがきっかけで、私と愁の関係が次第に深くなっていることに気づく。
それがとても嬉しかった。こうなることをずっと望んでいたから。
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