私が一番あなたの傍に…
「どんな仕事だって働くってことが大変だもんな。今俺らが当たり前のように働いているアルバイトだってお金をもらっているんだから立派な仕事なわけだし。そもそも何かやりたいことを見つけられるだけ幸せ者だよな。だって大半の人は普通に会社勤めを選ぶわけだからさ。俺らって受験の段階から良い選択をしてたよな。可能性がある道を選んでたわけだし」

今思えばそう思える。あとから看護師になりたいと思ってもなかなか現実は厳しい。
もう一度勉強をし直すってどれだけ大変なことか、想像するだけで頭が痛くなってくる。
そう思えば今の環境でずっと勉強してきてよかった。寧ろ今の環境で勉強しておきながら、私は他にやりたいことなんてあったのだろうかと思ってしまう。

「そうだね。あの時、漠然としたことしか考えてなかったけどね。私、他にやりたいことなんてあったのかなってさえ思うよ。やりたいことがないと思っていた自分は何を目指していたのやら…」

どうしてこんなことを言ってしまったのだろう。愁にこんな本音をぶつけても困らせるだけだ。
愁を困らせるのは良くない。今からなんでもないと言おうとしたその時、先に口を開いたのは愁だった。

「これは俺の想像だけど、看護師って患者の命を預かる仕事だろ?その命の重さや尊さが勉強していく中で分かってきて。責任の重さに逃げ出したくなったというか、急に現実味が帯びてきて、大変な仕事だなって思えたから、違う分野の仕事も視野に入れたいって思ったんじゃないか?」

あまり深く考えたことはなかったが、言われてみればそうかもしれない。
なんとなく選んだ学部で、なんとなく勉強している自分と、最初から看護師になりたくて看護学部に来ている人もいる。
様々な考えを持った人達が大学に集まっていて。私はその中に取り残された気がしていた。なんとなくなりたいだけの人が本当に看護師になれるか不安だった。
看護師は医者ほど責任はないにせよ、患者の命を預かる職業だ。それなりに責任を伴う。
そっか。私、怖かったんだ。患者の命を預かるということを…。
< 168 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop