私が一番あなたの傍に…
「実は良いワインを買っておいたんだけど、帰ったら飲み直す?」

そんなことを聞いてしまえば、飲みたいに決まってる。

「飲みます!絶対に飲みたいです」

先程のお店では高級レストランという雰囲気に飲まれてしまい、思ったほどお酒もそんなに飲めなかった。
実はまだワインを飲んだことがないので、ワインの味も気になる。

「そんじゃ早く帰って飲み直そっか」

居ても立っても居られない。お互いに早く飲みたくてしょうがない衝動に駆られていた。

「うん。今すぐにでも帰ろう!そして早く飲もう」

自分でも興奮しているのが分かった。それぐらいワインというお酒に対して期待値が高まっていた。

「俺、まだワイン飲んだことないから、どんな味なのか想像するだけですげー楽しみ」

それは私も同じ気持ちだ。大人から見たらまだまだ私達なんて子供に過ぎないだろうけど、どんどん知っていく大人の世界にワクワクしている。

「私もワイン飲んだことないから楽しみ」

「幸奈もなんだ。じゃ二倍楽しみが増したな」

好きな人と初めてを共有できる。たったそれだけのことでも嬉しい。

「そうだね。私も二倍楽しみが増した」

家までの道のりは長いが、帰りはもう家に帰るだけだと思うと、行きに比べて気持ちが楽だ。
電車も混んでいなかった。なんてたって今日は聖なる夜なので、ホテルへ泊まる人達がたくさんいるのであろう。
私達は今夜、どうするのだろうか。最近、そういったことはあまりしていない。
全くしないというわけではないが、以前に比べて回数が減った。同棲をすると回数が減るとよく聞くが、本当にそうだった。
それに対して悩んでもいない。今はそういった繋がりがなくても、愁と信頼関係があるという自信がある。
愁もきっと同じ気持ちだ。付き合う前に散々身体を重ねてきたので、こうして普通にデートをしている方が幸せを感じる。
寧ろ今まで普通のことができなかった。だから恋人らしいことに幸せを感じているのかもしれない。
そう思った瞬間、長い帰り道も悪くないと思えた。その分、愁と一緒に居られるから。
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