私の可愛い(?)執事くん
初デート

4月、入学式して1週間。
「どう?高校慣れた?」
「入学して1週間ですよ。全然」
電車を降りて薫さんと学校へ向かう。

「そういえば陽」
「なんですか」
「源さんと付き合い始めたの?」
「・・・それが、なんですか?」 
大声出そうになったが他の学生もいて迷惑だと思って
抑えた。

「いや、どーなのかなーって」
「恋人になりましたけど」
「へー、おめでとう。雰囲気違うなーって思ったけどやっぱりか」
小声で答えるとすごくキラキラした顔で迫ってきた。

「近いですよ、薫さん」
「あ、ごめん。じゃあデートとか考えないとね」
「なんで俺より楽しそうなんですか」
「えー、だって嬉しいんだよ。ずっと
見てきたからね〜」
ニコニコと嬉しそうな顔。

「喧嘩した時はちゃんと2人の言い分聞いてから
仲裁するから安心してね」
「安心していいんですか、それは」
喧嘩する前にそんなことを言われるのは複雑。

「いい加減気持ち切り替えないと」
「なにか言いました?」
聞き返しても
「なんでもな〜い」
と言われてしまった。
(空耳か?)
学校についてそれぞれの教室に向かう。

「じゃあね〜」
「またあとで」

(デート、か)
帰宅後、
「陽、今度の日曜日、予定ある?」
「いや、別にないけど」
「ちょっと付き合って欲しいんだけど」
恥ずかしそうにして
今までとは明らかに違う誘い方。
ーデートとか考えないとねー

「えっと、勘違いだったらごめん。
もしかして、デートの誘い、だったりする?」
「そのつもり、だけど」
目を逸らして口ごもる。
(どうしよう、すごくかわいい)

「分かった。場所は」
「私が決めてもいい?」
「いいけど」

その夜、ガッツポーズをしたところを薫さんに
ばっちり見られてからかわれた。

焦茶色のシャツにクリーム色のスカート。
「かわいい。それになんか、」
「なんか?」
言いづらいのか下を向く。

「おいしそう」
「美味しそう?」
「プ、プリンみたいで」
私の反応を気にして小声だけど笑ってしまった。

「やっぱりそう思う?」
「やっぱり?」
「薫もそう言ってた」
すごく嫌そうな顔。
ムッとして手を引いて歩き出す。

「今日は、他の男の名前、ださないで」
「分かった」
歩幅を合わせてくれてチラッと見ると顔が
赤くなっている。

今日は私の提案で植物園。
満開の桜、かわいい芝桜、色とりどりのチューリップ
などゆっくり見て回る。

「あ、渚。あそこ行かない?」
指さすのはシロツメクサのエリア。
この場所では自由に花を摘む事ができ
クローバーを探したり冠を作ったり賑やかな場所。

花を摘み捻って繋げていく。
「作れるの?」
「昔、じいやに教えてもらったから」
「そうなんだ、あ、写真撮っていい?
じいちゃんに送りたくて」
「もちろん、それじゃあ気合い入れて綺麗に
作らないと」
陽はジッと手元を見ている。

「陽、そんなに見られると作りづらい」
「どういうふうに作ってるのかなって」
照れながらも長くして数分。
最後の花を挿す。

「見て、できたよ陽」
「ほんとだ、すごい」
陽も目を輝かせて花冠を見つめる。

「写真撮って」
カメラを向けていた陽は輪っかを私の手から
取りあげた。

「せっかく作ったんだし」
そう言ってそっと私の頭に乗せる。
「うん、かわいいが増えた」
そう言って写真を撮る。

「そういうの、簡単に言うのよくないと思う」
「なんで?本当のことだよ」
自然と答える陽にドキドキする。

スマホをしまって一輪摘んで輪にした。
「陽?」
左手を取り薬指にはめる。
「シロツメクサの花言葉は私を思って。
渚がずっと俺のことを好きだと思ってくれるように
がんばるね」
冠に指輪。

「陽、計算してる?」
「計算?」
「シロツメクサ見るたびに思い出しちゃう」
「だったら本望だよ」
「ずるい」
(私は一生、陽に敵わない)
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