黒を以て白を制す


 「はぁー。なんかもう俺、無理だ。自覚した。我慢出来ない」

 「何が?」

 「言いたくて我慢出来ないなーって」

 「何を?言ってよ」

 「んー」


 珍しく言葉を濁しながら、伊那君は顔を手で覆って真剣に何かを考え込んでいる。言うか言わないべきか悩んでるっぽい。


 そこまで悩む話っていったい何?と内心ヒヤヒヤする。悪い話だろうか。別れ話とか?何の話だか分からず緊張して待っていると、伊那君は決心したように息を吐き、私を真っ直ぐ見つめた。酷く緊張した面持ちで。


 「あのさ、桑子。お願いがあるんだけど」

 「何?」

 「俺と結婚して」

 「え」

 「今すぐ。奥さんになって欲しい」

 「え、えぇぇぇぇぇぇっっ⁉」


 言われた言葉が何度も繰り返し心の中でリピート。大パニックが訪れる。


 フラグ立てのおっちゃん達がピンクの神輿を担いで大絶叫しながら心の中で大暴れしてる感じだ。わーっしょい!わーっしょい!て言いながら全員が全員ラブリーなハートのハッピを着て、小躍りまでしているかのような心境。つまり焦ってる。


 しかし、私よりも部長の方が焦った顔をしている。えー!俺めっちゃ邪魔じゃん。今言うなよ、後で言ってよ。って顔だ。デスクを一心に見つめて全力で気配を消してる。


 「ごめん。もっと、ちゃんとした場所で改まって言うべきなのは分かっているんだけど……」

 「そんなの別にドコだっていいよ!」

 「本当に?結婚してくれる?」

 「うん」

 「マジで?いいの?」

 「うん」


 頷いた私に伊那君は嬉しそうに笑う。「大事にするね」と言いながら手を繋ぐように指を絡み取られて心臓が爆発しそうになった。

 マシンガンどころかバズーカ砲で、いやミサイルでハートを撃ち抜かれた気分だ。どうしよう。嬉しさが止まらない。ひゃっほー!

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