松之木学園♥生徒会執行部
澤田君からすれば怒りすら湧いてこないのが現状だろう。さっさとラーメンを食べに行きたいと思っていそうだ。そう思っていた私の耳に可愛らしい声が聞こえてくる。
「やほー。お兄ちゃん。来ちゃった〜」
「は?」
「……香織ちゃんっ!」
手を振られた澤田君よりも反応が強く、ツンキーが大声で少女の名前を叫ぶ。釣られて姿を見れば、セーラー服を着た純情可憐な美少女の姿がそこにあった。
お兄ちゃんと呼ぶってことは澤田君の妹?と、疑問に思う私の傍でツンキーが無駄にシャキッと畏まる。ドロドロにだらしなく顔を緩めちゃって。
いつもよりワントーン高い声で「元気だった?」と聞く様はまるで恋する男子。ってか間違いなくツンキーの好きな女の子はこの子だろう。私を含め、この場に居る全員がそう思っている。
「お久しぶりです。原谷君」
「いやぁ、どうも」
「またお兄ちゃんと喧嘩をしていたんですか?」
「そんなまさか!戯れて遊んでただけっス」
明るい笑顔を向ける香織ちゃんに、ツンキーがキャピるんと聞こえてきそうなくらいデレッとしながら嘘を言いまくる。
澤田君は微妙な顔をしたが、小春も鈴花も視線を重ね合わせて『ラッキー』って顔だ。勿論、颯と理央も。
隣に居た雄大なんて幸運が振って舞い降りてきたとでも言わんばかりに、唇の端に笑みを湛えている。
私も皆と同様ラッキーな気持ちいっぱいで眼鏡を指で押し上げた。最大のチャンス。これは使える。
「初めまして!松戸菜々です。香織ちゃんって呼んでもいいですか?」
「はい!是非っ」
「澤田君の妹で合ってます?」
「そうです。よろしくお願いしますっ」
ペコッと大きく頭を下げつつ、香織ちゃんは私たちに「いつも兄がお世話になってます!」と元気に挨拶をしてくれた。中学生くらいかなー。愛嬌があって可愛くて良い子そうだ。釣られるように理央たちも自己紹介をする。