松之木学園♥生徒会執行部



 「菜々を閉じ込めたときみたいに慶彦を理科室に閉じ込めたでしょ」


 鈴花が呆れた顔で口を開く。眼鏡の奥の瞳から冷めた目で見られ、ツンキーはソワソワと落ち着きなく動いてる。内心やばいと思っていそう。



 「閉じ込めてなんかねーし。因縁をつけんな」

 「よく言うわ。鍵を閉めるところを皆で見てたんだから」

 「嘘つけ!俺は閉めてないっ」


 怒りに顔を歪めながらツンキーは鈴花を恨めしそうに睨む。この皆とは文字通り本当に“皆”なのだが。おバカなツンキーは気づかないままだ。


 「本当に?じゃあ、開けても中には誰も居ないよねぇ?」

 「居ねぇだろ……」

 「あ、惚けても無駄だよ。開けたら分かるから」


 颯が私の手から鍵を抜き取り、あざとい微笑みを顔に描く。

 さすがのツンキーも目を泳がせてだんまり。開けたら慶彦が出てくるし。拒否すれば怪しまれる。


 オマケにどっちを選んでも香織ちゃんとの校内デートが無くなるから何も言えないみたい。

 諦めて開ける方を選べば無実っぽく振る舞えるのに欲に忠実。これがこの男の強みであり弱みなのかも知れない。


 「この中に慶彦さんが居るんですか?」


 本日の主役、香織ちゃんが理科室の扉に手を置き、真顔で私たちに尋ねる。その瞬間、慶彦が「香織ちゃーん」と叫びながら扉をガンガンと叩いた。


 ナイス慶彦。いかにも助けを求めてるっぽい。微かにゲームの音が向こう側から漏れてきているが、そこはもう誰も気にするまい。

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