お針子は王子の夢を見る
「お仕事ですから、作りますけど……」
困惑して、ルシーは答える。
「そうじゃなくて」
エルヴェは言葉を切り、じっとルシーを見た。
ルシーの鼓動がどきどきと大きくなる。
「俺と結婚してほしい」
真剣な目で、彼は言った。
「この服を着るあなたが幸せでありますように。その縫い取りを見た瞬間、君に恋をした」
「……会ったこともございませんでしたのに」
「だが、君が縫った服はいつも愛にあふれていた。優しくて、着る者を幸せにする服だ」
「過分なお言葉でございます」
「俺はもう、君以外に考えられない」
エルヴェはルシーを抱きしめた。
たくましい胸に、ルシーはさらに鼓動が早くなった。
その直後。
「だめ!」
シェルレーヌが叫んだ。
「だめ! だめよ!」
錯乱したように、叫び続ける。
ルシーは慌ててエルヴェから離れた。
「大丈夫よ、どこへも行かないから」
ルシーはシェルレーヌをなだめた。
「だから落ち着いて」
優しく背をなでる。母は、言葉にならない思いを嗚咽にしてこぼした。
「私、結婚はできません」
ルシーはきっぱりと言った。
母をこの世に縫い付けたのは自分だ。だからこそ、置いていくことなどできない。
困惑して、ルシーは答える。
「そうじゃなくて」
エルヴェは言葉を切り、じっとルシーを見た。
ルシーの鼓動がどきどきと大きくなる。
「俺と結婚してほしい」
真剣な目で、彼は言った。
「この服を着るあなたが幸せでありますように。その縫い取りを見た瞬間、君に恋をした」
「……会ったこともございませんでしたのに」
「だが、君が縫った服はいつも愛にあふれていた。優しくて、着る者を幸せにする服だ」
「過分なお言葉でございます」
「俺はもう、君以外に考えられない」
エルヴェはルシーを抱きしめた。
たくましい胸に、ルシーはさらに鼓動が早くなった。
その直後。
「だめ!」
シェルレーヌが叫んだ。
「だめ! だめよ!」
錯乱したように、叫び続ける。
ルシーは慌ててエルヴェから離れた。
「大丈夫よ、どこへも行かないから」
ルシーはシェルレーヌをなだめた。
「だから落ち着いて」
優しく背をなでる。母は、言葉にならない思いを嗚咽にしてこぼした。
「私、結婚はできません」
ルシーはきっぱりと言った。
母をこの世に縫い付けたのは自分だ。だからこそ、置いていくことなどできない。