姉の身代わりに
 そこまで口にして、やっとオーガストも折れたのだ。
 リーゼルはあの日、オーガストとの婚約に至るまでのすべてを彼から聞いた。
 エリンが仕組んだこと。嘘と偽りに包まれたような出来事であったが、それもすべて思い合う二人を結びつけるためのもの。
 不器用でありながらも、愛を感じた。それは家族愛なのか。友愛なのか。言葉で言い表せないあたたかな感情。オーガストを想う気持ちとは異なる気持ちだった。
「リーゼル……」
 目の前に愛する夫の顔がある。
 不器用でありながらも、一途にリーゼルを想い続けた彼。
 彼が大きな手で触れる場所は、次第に熱を帯びてくる。高まる鼓動、荒い息遣い。
 彼が導く快楽に身を任せる。
 心だけでなく身体も結ばれ、リーゼルは幸せの絶頂へと身を委ね、意識を手放した。
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