姉の身代わりに
7.姉(2)
☆☆☆
 エリンが初めてリーゼルと出会ったのは、まだエリンが七歳のときだった。
 マキオン公爵家のお茶会に、当時はまだ伯爵家の令嬢であったリーゼルが、母親と一緒に参加していた。
 マキオン公爵夫人の噂もあってか、その娘であるエリンに近づこうとする子供たちはいなかった。遠巻きに自分たちが巻き込まれないような程度の距離を保ち、見かけだけの付き合いをしている。
 子どもであるエリンにもそれを感じ取ることはできた。とにかくマキオン公爵夫人の醜聞に巻き込まれないように、と彼女たちが距離を保とうとしていることが。
 ――つまらない。
 同じような年の女の子が集まると聞いていた。だけど、つまらない集まりだった。
 のっぺらぼうの仮面をかぶった者たちの集まり。それは大人だけでなく、その子どもたちも同様に。
 エリンは母親に一言告げると、お茶会の会場から庭園へと逃げてきた。
 この庭園はマキオン公爵家の自慢の庭園である。庭師が丹精込めて手入れをし、それをエリンも手伝っていた。土いじりをするエリンを、母親は面白くなさそうに見ていて、その場を見られてしまうと激しく折檻されたものだ。
 ――うわぁ、きれーね。おかあさま。
 ――きっと、このお世話をされている方の心が優しいのでしょうね。お花は、世話をしている人の心を映すと言われていますからね。
 その声が気になって足を向けると、一組の母娘が花を愛でていた。
 エリンに気づいた女性が丁寧に頭を下げる。
 ――綺麗なお庭でしょ?
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