清くて正しい社内恋愛のすすめ
 相田は多少困惑した様子で眉間に皺を寄せると、小さく首を横に振った。

「そこまで詳しくは聞いていないらしい。ただ先方の希望は、穂乃莉との面会……だそうだ」

 加賀見は相田の答えに軽く相槌をうつと、小さく息を吐きながら穂乃莉の顔を覗き込む。

「とりあえず、行くしかなさそうだけど……大丈夫か?」

 穂乃莉は加賀見に不安げな顔を向けると、しばらくじっと考えこんだ。


 東雲の社長が、何の目的で穂乃莉との面会を希望しているのか、全く予想がつかない。

 仮に支配人の件が社長に報告されたとして、東雲グループほどの大企業の社長が、わざわざ訪れるなんてことがあり得るのだろうか……?


 ――加賀見の言う通り、とりあえず行くしかないよね。


 穂乃莉は顔を上げると、加賀見に小さくうなずく。

 そして椅子に掛けてあったジャケットに袖を通すと、硬い表情で相田を振り返った。

「すぐに行きます」

 穂乃莉のまっすぐ通った声に相田がうなずき、穂乃莉は相田の後について社長室へと向かった。
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