清くて正しい社内恋愛のすすめ
 エレベーターを降りた穂乃莉は、社長室の前まで来ると一旦息を整える。

 緊張した面持ちで社長室の扉をノックしようとすると、中から話声が聞こえてぴたりと手を止めた。

 声の主は大島のようだ。

 もうすでに東雲の社長は来ているのだろうか?

 相田に促され、穂乃莉はゆっくりと扉をノックする。

 中から「どうぞ」という声が聞こえ、穂乃莉は硬い表情のまま扉を開けた。


「失礼します……」

 穂乃莉は緊張した声を出すと、目線を下げたまま静かに会釈する。

 そして顔を上げた穂乃莉の目に飛び込んできたのは、拍子抜けするほど穏やかな雰囲気の若い男性だった。


 戸惑った穂乃莉の様子に気がついたのか、大島が立ち上がると男性に手を向けた。

「久留島くんは、初めてお会いするそうだね。こちらは東雲グループの東雲社長だ」

 大島に紹介され、男性はゆっくりと立ち上がると、柔らかい笑顔で穂乃莉に歩み寄った。


「はじめまして。東雲 絢斗(しののめ あやと)です」

 東雲はやや栗色の柔らかい髪をさらりと揺らすと、穂乃莉に右手を差し出した。
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