清くて正しい社内恋愛のすすめ
「いただきます」

 穂乃莉は独り言のように小さくつぶやくと、ミルクティーを一口、口に含む。

 疲れた体に糖分がほろほろと染みわたるようで、思わず「ほう」とため息が漏れた。


 視界の端にくすりと肩を揺らす相田の姿が映り、「そうそう」と声が聞こえる。

「陵介に、出張申請は受理しといたからって、言っといてくれるか?」

「出張ですか?」

「東雲に行くんだろう? 穂乃莉のと二人分、申請されてたぞ」

「えっ!?」

 穂乃莉は思わず素っ頓狂な声を上げ、目を泳がせた。


 ――出張申請って……それって、まさか……。加賀見と二人で出張に行くの!?


 考えてみれば、企画書が完成したら、それを持って営業に行くのは当然な話。

 でも……。

 こんなに大きくなった恋心を持って二人きりの出張だなんて、果たして穂乃莉の心臓が持つのだろうか?

 思わずその様子を想像して、動悸がしてくるほどだ。


 ――ど、ど、どうしようー。


 動揺しておたおたする穂乃莉の姿にほほ笑むと、相田はコートを羽織り鞄に手を伸ばす。
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