左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
「うわ!」
 突然の穴に足をとられ、男は転んだ。
 その隙にキアーラの手をとって駆け出した。

「待て!」
 男たちが追い掛けて来る。
 待つもんか!
 フェデリーカは走りながら手を地面に向ける。
 地面にいくつもの穴がぼこぼことあいて、男たちはまた転んだ。額に傷のある男だけが器用に避けて追って来る。

「殿下!」
 正面から声がした。護衛がキアーラのバッグを持って走って来るところだった。
「人さらいよ! 捕まえて!」
 護衛はすぐに男たちにとびかかる。
 二人を捕まえ、傷のある男には逃げられた。

「どうなることかと思いました」
 キアーラがへなへなと座り込む。
「いくら治安が良くても、ああいうやつらはいなくならないのね」
 どきどきしながらフェデリーカは言った。
 いくら深呼吸をしても、動機はおさまりそうになかった。



 護衛は街の衛兵に人さらいを引き渡した。
 ひったくりの少年も衛兵に渡したと言う。その手続きで戻るのが遅くなったのだ。
「なんとか無事でよかったです。二度と街には行かないようにしましょう」
 キアーラは怯えてそう言った。
「……そうね」
 答えながら、フェデリーカは別のことを考えていた。

 これなら退屈が凌げそうだ。
 キアーラに知られたら怒られる。見つからないようにしよう。
 うふふ、と笑いが漏れて、キアーラに気味悪がられた。

***

 それから、数日後。
 ジャンルーカの街には穴ぼこが増えた。
 その近くには縄で縛られた悪人がいた。
 地面にその罪名が書き残されていた。
 何者かがやったのかはわからず、人々は神の罰が下った、とささやき合った。
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