左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
「待ちなさい! 追って!」
 フェデリーカが叫び、護衛が走り出す。
 彼女も走るが、男の足には追いつけない。
 男は町はずれの森に逃げ込み、護衛が追った。
 息を切らし、フェデリーカは一人、立ち止まった。
 木に手をついて、荒い呼吸を繰り返す。

「お前、よくも」
 後ろから声がした。
 振り返ると、逃げたはずの男がそこにいた。ぎらついた目でフェデリーカをにらむ。
「お前のせいで、仲間が!」
 とっさに手を伸ばす。が、狙いが定まらず、男の後ろに穴ができた。

「お前の魔法は穴を掘るしか能がないんだろ。わかってしまえばなんてことない」
 男はフェデリーカの腕をひねりあげる。
「離して!」
「お前のせいで!」
 男はフェデリーカの服を力づくで引き裂き、押し倒した。
 フェデリーカは必死で抵抗した。集中できないので魔法が使えない。

「やめろ!」
 声が飛んできて、男は顔を上げ、立ち上がった。
 フェデリーカが目をやると、そこにはエリゼオがいた。
 剣を抜き、男に向ける。切っ先が月光を反射してきらりと光った。青白い刃はそれだけで美しかった。
 男は舌打ちして逃げ出した。

「待て!」
 エリゼオが剣を振ると、風の刃が放たれて木の枝を払った。
 足元に落ちたそれを、男はひょいと避けて走っていく。
 エリゼオの部下が男を追いかける。

 エリゼオは剣を鞘に納め、フェデリーカを見た。
 彼女は今、自分を抱くようにしてがたがたと震えている。
「ご無事ですか」
 エリゼオは上着を脱いでフェデリーカにかけた。
 彼女は答えられずに震え、涙をこぼした。

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