左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~



「ご要望ですから、魔剣をお持ちしましたよ」
 あるとき、彼はそう言って魔剣を見せてくれた。が、手に持たせてはくれない。

 鞘には青銀と青い宝石の象嵌(ぞうがん)が施されていた。花を編んだような懸花(けんか)装飾が宝石を囲み、先端まで伸びている。柄頭にもまた青い石が嵌め込まれていた。

「美しいわ」
 青い夜のようでもあり、蒼穹を巡る風のようでもあった。
 抜き身は青白く、澄んだ夜空を渡る風のようだった。

「私も持ってみたい」
「無理ですよ」
「武器だから人には持たせられないの?」
 愛用の武器は絶対に誰にも触らせない、という兵の話を聞いたことがある。

「そうではないのです」
 彼は刀身を鞘に戻し、床に置く。
「持ってみてください」
 けげんに思いながら手を伸ばす。剣が重いのは知っている。が、かつて兄の剣を持ってみたとき、持てないというほどではなかった。
 魔剣の柄を持ちあげようとして、手がするりと抜けた。

 再度、しっかり握って持ち上げようとする。
「なにこれ、重い!」
 まるで地面にはりついたかのように、剣が持ち上がらない。

「選ばれた者以外は持つことすらできないのですよ」
 彼はにこやかに笑い、軽々と持ち上げた。
「魔剣っぽい」
 フェデリーカがつぶやくと、彼はまた笑った。

***

 街は穴が開くことがなくなり、街の人々はほっとしていた。
 捕まるのはいつも小悪党だったし、日々の生活のほうが大事だ。
 人々は神の罰を口にしなくなった。
 事件が起きたのは、そんな頃だった。
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