左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
フェデリーカは本を手にいらいらしていた。
エリゼオが差し入れてくれた本で、面白そうだった。
だが、彼が目の前にいるから、まったく集中して読めない。
「なんで毎日ここにいるの。暇なの?」
「仕事はしていますよ」
彼は書類を持ち込み、確認してはサインしていた。
「あなたがおとなしくしてくれると確信するまでは来ますから」
「もうやらないわよ。懲りたから」
「信じられませんね」
「私だってバカじゃないわよ」
「もはや王女として取り繕うこともなさらない」
エリゼオは微笑した。
「化けの皮がはがれたんだもの、必要ないでしょ」
「とんだじゃじゃ馬でいらした」
揶揄するような口調に、フェデリーカは憮然と口をとがらす。
「かわいいですよ」
言われて、愕然と彼を見た。
「なにを言ってるの?」
「かわいいと申し上げました」
微笑したまま彼は言い、フェデリーカは顔を赤くしてうつむいた。
くすくす笑いが聞こえて、ぎゅっと目をつむる。
からかわれた。悔しい。
「肥沃な大地のような黒髪、新芽のような若々しい緑の瞳、愛らしい頬。奔放に生き生きとしている殿下はなかなかに魅力的でいらっしゃる」
余裕のある声が腹立たしい。
「あなたなんか」
フェデリーカはきっと彼をにらんだ。
「風の魔剣のおかげで有名になっただけでしょ! 魔剣がなければただの人よ!」
「聞き捨てなりませんね」
彼は目を鋭く細め、ゆらりと立ち上がる。気迫に思わず身を引いた。彼が急に、真冬に肌を突き刺す突風になったようだった。