左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
「伯爵はご無事かしら」
 彼女が言うと、キアーラは窓の外に目をやった。
「大丈夫なんじゃないですか? なんといっても魔剣の使い手ですから」
 一振りで風を起こし、それが刃となって木の枝を払った。そのさまをフェデリーカは見ている。

「だけど相手は乱暴な強盗でしょ? 心配だわ」
「大丈夫ですよ」
 なんだその無駄な確信は。
 フェデリーカは内心でつっこむ。

「ああ、心配だわー」
 フェデリーカは窓辺に立ち、街を眺めた。
「どちらにいらっしゃるのかしら」
「あっちのほうですよ」
 キアーラも窓辺に立ち、指をさす。

「わりとここから近いそうで」
「そうなんだ」
「見に行きたいんですか? ダメですよ」
 ばれていた。

「ちょっとだけ、こそっと見るくらいなら」
「ダメです。危ない目にあったばかりですよ」
 う、とフェデリーカは言葉につまる。

 キアーラは深夜の討伐を知らない。だから二人ででかけたときのことを言っているのだが。
 フェデリーカの頭に押し倒されたときのことが蘇り、ふつふつと怒りが沸いた。
 今度会ったときには遅れはとらないんだから!

「私の代わりに誰かに様子を見に行かせて。それくらいならいいでしょう?」
 フェデリーカは言う。
 うーん、とキアーラは悩む。
 もう一押しだ。
「伯爵が心配なの」
「……仕方ないですね」
 キアーラは了承した。彼女は恋の話に弱い。

「離宮の衛兵にお願いしてきますね。部屋から出ちゃダメですからね」
「わかってるって」
 キアーラが部屋を出る。フェデリーカはしばらく街を眺めていた。
 もういいかな。
 そろっとドアを開けると、周囲には誰もいなかった。
 フェデリーカはこっそり街へ向かった。
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