左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
馬を駆り、現場の近くへ向かう。
人目につかない場所で、馬を木に繋ぐ。
それから野次馬に混じってたてこもりの現場を眺めた。
周りから少し離れた一戸建てだった。土を塗り固めた壁、スレートの屋根。窓の木戸は今、すべて閉められている。
それをエリゼオが率いる衛兵が取り囲んでいた。
「ずっとにらみあってるんだってよ」
「いつまでああしてるんだよ」
「無理矢理踏み込むと人質の命が危ないだろう」
野次馬ががやがやと言いあう。
「娘が孫と一緒に中にいるんです、早く助けてください!」
年配の女性が衛兵にすがって泣いている。
「もちろん助けますよ」
衛兵はなだめるように話しかけている。
「うちの娘もいるんです、一緒にお茶するんだって出掛けて」
別の年配女性が泣いて訴える。夫らしき男性がその背を撫でている。
「大丈夫ですよ」
衛兵は型通りのことを答える。今はそれしか言えないのだろう。
神官がかけつけて、女性の前に跪いた。
「一緒に神に無事を祈りましょう」
フェデリーカは複雑な気持ちでそれを見た。神はいつだってなにもしてくれないのに。
わかっている。それでも人は祈らずにいられないのだ。
彼女には今、神官の言葉がどれほど心強いだろう。
神官が駆け付けたのは、不安な人々を落ち着かせるためだろうか。もしかしたらエリゼオが手配したのかもしれない。
だが、結局は祈るだけではなにもできないのだ。
エリゼオはフェデリーカからは遠いところにいて、ちらっと姿が見えるだけだ。あそこが作戦本部なのだろう。
うーん、とフェデリーカは考える。
これは私がなんとかできるのではないか。
穴を掘って家までトンネルを作る。人質を助け出す。その後に衛兵が犯人を捕まえる。
完璧じゃん。
思いついたら、居てもたってもいられなくなった。魔力も増えた現在、トンネルくらい掘れるだろう。
人ごみをそっと離れ、フェデリーカはそれができる場所を探した。