左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
 男は炎を直撃させず、いたぶるように攻撃している。徐々にエリゼオが追い詰められている。男がその気になれば、エリゼオはいつでも火だるまだ。

 フェデリーカは必死に持ちあげようとするが、動かない。
 お願い、彼にこの剣を。
 フェデリーカは歯をくいしばって力を入れた。
 が、やはり、びくともしない。

「手伝って」
「無駄だ」
 兵は諦めたように言う。
「我々も過去に試した。十人がかりでも持ち上げられなかった」
「そんな」
 フェデリーカは剣をにらみつけた。

 地面に転がる青白い刀身が、陽光を受けてきらりと光る。
 それなら。
 フェデリーカは地面に手をついた。
 いちかばちか。
 疲れ切った体を奮い立て、気力を振り絞り、神経を集中する。

 ずる、と地面が動いた。剣が一緒に動く。
 いける!
 フェデリーカはさらに集中した。
 ずるずると、剣が地面ごと滑っていく。
 兵たちは息を呑んでそれを見守った。

***

 男は目の端に動くものを捉えた。
 エリゼオから目を離すことなく、一瞬で確認する。
 魔剣がずるずると移動しているのが見えた。
「あの女か」
 男は左手をフェデリーカに伸ばす。

 気付いた彼女はとっさに魔力の出力を変える。
 土壁が発生し、炎はフェデリーカに届かなかった。

 その隙にエリゼオが撃ちかかって来る。
「くそ!」
 剣をはじき、男は炎の柱をエリゼオに伸ばす。

 エリゼオは大きく跳ねて避けた。ごろごろと転がり、そのまま魔剣を手にする。
「振り出しにもどったな」
 エリゼオはにやりと笑い、男は顔をしかめた。
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