左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
 エリゼオに抱きしめられた。力強い抱擁に驚き、彼を見る。
「どれだけ心配したと思っているのですか」
 だからって抱きしめるか、普通!
 フェデリーカの言葉は声にならず、ぱくぱくと口だけが動いた。

「あなたをとがめたい気持ちはあります。が、女性たちを助けたこと、私を助けたことに変わりはありません」
 フェデリーカは目をまばたいて彼を見た。
 てっきり、ものすごく怒られるのだと思っていた。

「しかし、私もまた、あなたを助けた」
「そうですね……」
 彼がいなかったら、あの男たちにひどい目に遭っていただろう。

「お礼の一つもしていただかなくては」
「なにをすれば」
「目を閉じて」
 言われるがまま目を閉じる。

 と、唇がなにかがで塞がれた。柔らかく温かい。
 まさか、と目をあけるとまさかだった。

 どん、と彼をつきとばす。
 彼はにこやかにフェデリーカを見つめる。
「卑怯者!」
 黙ってキスを奪うなんて。

「無防備すぎます。やはりあなたに荒事は無理です」
 エリゼオは笑顔を崩さない。
「今度こそ凝りてくださいますね? でないと強硬手段にでますよ」
 フェデリーカはエリゼオをにらんだ。

「あなたの言うことなんて聞かない!」
「……それでこそ殿下、と申し上げるべきか」
 エリゼオは笑った。秋風のように爽やかだった。
 バカにされている、とフェデリーカは悔しく思った。

「では、私も手段を選ばないことにいたしましょう。今日はこれにて退室いたします」
「二度と来ないで!」
 叫びを無視して、彼は一礼して去って行った。
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