左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
 私室に戻ったフェデリーカは人払いをしてソファに倒れ込み、クッションを抱きしめて涙をこぼした。
 父は結局、自分をなんとも思っていない。
 わかってはいたが、それがなんとも言えず胸をしめつける。
 しかしエリゼオはどうしてあんなことを言ったのだろう。

『我が婚約者のためでございますれば、命など惜しくはございません』

 もしかして。
 そう思う気持ちがよぎり、フェデリーカは首をふる。

 彼が自分を好きだなんて、そんなことはありえない。自分は迷惑をかけてばかりだったのだから。
 単に、彼は人として立派なのだろう。だからフェデリーカが苦しんでいるのを見過ごせなかった。ただそれだけのことに違いない。
 そう思うと、また涙があふれた。

「私、バカみたい」
 自分のいいように彼の気持ちを空想して、違うと思い直して傷付いて。

 自分はもっと利口だったはずだ。
 弟も、こうだったのだろうか。コルネリオはレベッカと仲睦まじかった。だからレベッカのために、愚かになってでも彼女の気を引きたかったのだろうか。

 こんこんこん、とドアがノックされてフェデリーカは涙を拭った。
「フェデリーカ、私だよ」
 ジルベルトの声に、フェデリーカは扉を開け、驚いた。

 兄の後ろにはカロージェロがいたからだ。
 父が自分の部屋を訪れたことなど今まで一度もない。

「入るよ」
 返事を待たず、ジルベルトが入り、カロージェロが続く。
 父の手に白いバラの花束があるのを、フェデリーカは落ち着きなく眺めた。

「どうぞおかけください」
 先ほどまで自分が寝そべっていたソファを勧めると、カロージェロは首を振った。
「長居をするつもりはない」
 拒絶の言葉にフェデリーカはうなだれる。
 いったいなにをしに来たというのか。

「お前に花を賜る」
 カロージェロが言い、手を突き出す。
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