左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
「……どうして」
「受け取れ」
 命令するように言われて、フェデリーカはしぶしぶ受け取った。

 直後、カロージェロは身を翻して部屋を出て行く。
 唖然とするフェデリーカに、ジルベルトが優しく微絵みかける。

「少し私と話をしよう」
 兄に誘導され、フェデリーカは彼と向かい合わせにソファに座った。

「あれでも、父は一応、謝罪に来たつもりなんだよ」
「嘘よ」

 一言も、なにもなかった。ごめんなさいとかすまないとか悪かった、とか。「悪かった」は謝罪じゃないという人もいるが、それでも謝罪の気持ちがこもっていれば、その気持ちは伝わってくると思う。伝わらないなら、その人が「悪かった」に謝罪の気持ちを込めていないからだろう。

 謝罪の代わりに花束でごまかそうとするなんてひどすぎる。小さな子供なら物につられるのかもしれないが。

「嘘じゃない。十五本の薔薇の花言葉は「ごめんなさい」なんだよ」
「なによそれ」
 謝罪は自分の言葉で謝るからこそ意味があるのだろうに。

「父は昔から謝るのが苦手でね。母から聞いたことがある。夫婦喧嘩をしたときに、父が悪いのに意地を張って謝って来ないから、「悪いと思ってるなら十五本の薔薇の花束をちょうだい」って言ったんだそうだ。真冬だから薔薇なんて咲いてなくてね、父は十五本の薔薇の造花を用意させて母に渡したそうだ。それ以来、十五本の薔薇の花束を渡すことが父の謝罪の形になったんだよ」
「そんなの聞いてない」
 父はもちろん、母はからも聞いたことがなかった。ジルベルトだけが知っているなんてずるい気がする。

「母が亡くなってから、父も今日まで忘れていたんじゃないのかな。先ほどマルティノッジ伯に言われて、反省したんだと思うよ」
「……私の言葉は聞いてくれないのに、他人の言葉には耳を貸すのね」

「そういうときもあるよ。身内だからこそ反発してしまうことがある」
 わかったようなことを言うジルベルトがなんだか腹立たしくて、フェデリーカはじとっと彼を見た。
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