左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
「そんな顔をするんじゃない。マルティノッジ伯の前でもそんな態度なのか?」
「なんで彼の話になるのよ」
「恋仲だと聞いていたが」
「絶対に違うから!」
「……そういえば、縁談に驚いていたものな」
「あんなの縁談なんかじゃないわ!」
「しかし、仲睦まじい噂は王都まで届いていたよ。キアーラに確認したらすでに良い仲だと。だから父はお前と彼を結婚させることで謝罪にしたかったようだ」
「そんなの謝罪にならないし、なんで私に聞いてくれないの!?」

「お前は素直じゃないから」
 言われて、がっくりとうなだれる。

「彼と血縁を結んで国境の守備を固めたい、とは父も思っていたようだ。だから一石二鳥だと」
「結局は政略結婚なんじゃない」
「……お前が頑なになってしまうのもわかる。父上はお前に必要以上に厳しかった」
 言われて、フェデリーカはうつむく。

「彼との婚約は父なりの謝罪だ」
 ジルベルトの言葉に、フェデリーカは顔を上げた。
「想い合っているなら、と父上は彼に縁談をもちかけようとしていた。同時期に彼から婚姻の申し込みがあった」
「嘘よ」
「信じられない?」
「だって……」

「お前も確執の原因はわかっているだろう。父もわかっている。わかってはいるが、どうしても自分を止められず感情的になってしまう。年をとっても……もしかしたら、だからこそ長年の鬱積は簡単には解消できないんだ。お前を離宮に追いやってから父の酒の量が増えたよ。お前を愛してないわけじゃないんだ。生まれたとき、それはそれは喜んでいた」
 ジルベルトの言葉に、フェデリーカの心が複雑に揺れる。

 自分が生まれたとき、ジルベルトは七歳だ。彼はその目で喜ぶ父を見ていたのだ。
「人の心は一つじゃない。矛盾したものを持っている。わかるだろう?」
「だけど」
 だからといって納得できるものでもない。
 だけど、父から歩み寄ろうとしてくれた。今までの人生で初めてのことだ。
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