レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
 房事の際に用いる薬については、事前に読まされた本で学んでいた。体温の上昇についても書かれていたため今の熱さは想定内だった。そして効果を収めるには性交により発散するか自身で発散するか、薬効が切れるまで耐え忍ぶかのどれかしか方法がないという。
 考えるまでもなく、ひとりで耐えてやりすごすつもりでいた。

 ルジェレクス皇帝がノツィーリアの頬を慎重な手付きで撫でながら、薬効に苦しむノツィーリア以上に苦しげな声音で問い掛けてくる。

「ノツィーリア姫。そなたを金で一晩借りようとするなどという暴挙を働いておいて勝手を言うが……。余に、そなたの苦しみを解放する手助けをさせてはもらえぬだろうか。無論、そなたが嫌でなければ、だが」
「とんでもないことでございます……! 私ごときがあなた様のお手をわずらわせるなど、おこがましいにもほどがあります!」

 途端に眉根を寄せた皇帝が、ノツィーリアの頬から手を外し、視線を逸らす。

「すまぬ。媚薬を口実に、そなたを抱こうなどと……」
「いえ! あの場からお救いいただけたことだけでも身に余る待遇ですのに、さらにお助けいただくなど恐れ多いことで……、んっ……!?」

 何の前触れもなく、一気に薬効が膨れ上がった。
 救いの手が今まさに眼前に差し出されているからだろうか、それとも長時間我慢し続けてきたせいだろうか――。これまではどうにかやりすごせてきたにもかかわらず、今は無表情を保てないほどに心と体を支配する。

(急にこんなに苦しくなるなんて……!)

 体が刺激を求めて疼き出し、涙が浮かんでくる。にわかに速くなった鼓動に息苦しくなり、肩で息をせずにはいられない。ノツィーリアは自分を強く抱き締めると、二の腕に爪を立ててその痛みで媚薬の効果をごまかそうとした。
 力んだ手が強引に剥ぎ取られる。汗ばむ手が、それ以上に熱い両手に包み込まれる。

「ノツィーリア姫、どうか余に身を委ねてはくれまいか。苦しむそなたを見捨てるなぞ、余にはできぬ」
「本当に……ご迷惑ではないのですか?」
「もちろんだ」
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