レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
 熱を欲する強烈な衝動が、優しい声に促されて思考を侵食していく。

 本当に、この偉大なる皇帝にそこまでしていただいてもいいのだろうか――身を委ねろと言ってくださった――今すぐに助けて欲しい――頭の中がぐちゃぐちゃになり、涙があふれそうになる。
 ノツィーリアは息を切らしながら、必死に思いを言葉にした。

「では、恐縮ではございますが、どうか、わたくしめを、お救いくださ……、っ」

 言いきる直前で唇を塞がれた。その熱さだけで、体が欲望の火柱に飲み込まれる。
 烈火に焼かれながらも辛うじて形を保つ理性にすがりつく。自分から皇帝を押し倒したくなるほどの衝動をこらえながら、情熱的な口付けを夢中で受けとめる。

「ああ、ノツィーリア姫……!」

 わずかに唇が離れるたびに、吐息混じりにあるいは熱を帯びた声でノツィーリアの名を呼んでは幾度も唇を重ね直してくる。 腰に回された腕に、強く抱き寄せられる。

 なぜこんなにも、狂おしげに触れてくれるのだろう。
 なぜこんなにも、切なげな声で名を呼んでくれるのだろう。
 まるで媚薬の効果がうつってしまったかのような皇帝の一挙手一投足に、ノツィーリアは胸の高鳴りを覚えずにはいられなかった。


 優しさと情欲とを孕んだ口付けが、灼熱の夜の始まりを告げる。
 媚薬の熱と、ルジェレクス皇帝から与えられる熱情に酔わされて、何も考えられなくなる。


 ノツィーリアは、絶え間なく与えられる悦びに、ただひたすらに溺れ続けたのだった。
< 57 / 66 >

この作品をシェア

pagetop