レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
「話を戻そう。先月、レメユニール国王のおぞましい思い付きでそなたが汚されると知り、その窮地から救い出したいと願うも、余の個人的な思いだけで兵を動かすわけにはいかなくてな。気を揉む日々を送っておったのだが……」
「それは、恐れ入ります……」
「そんな中、我が帝国同様そなたの母君を支持する国々から『レメユニール国王の狼藉はいよいよ捨て置けぬ』との声が続々と上がりはじめたのだ。希代の踊り子を手込めにしただけでも許しがたいのに、その娘まで我欲を満たすために利用するなど到底看過できぬと。これを機に、国王の暗殺をもくろむ国も現れはじめたのだが、遠方他国のその動勢を根拠に『我が帝国の近傍に争いの火種が持ちこまれることを防がねばならぬ』との大義名分ができた。そこで、あえて国王の事業に乗るふりをして国王に大金を与えて油断させ、浮かれているところにさらなる儲け話となる魔道具の利用を持ちかけ、堂々と中枢へと踏み込み、そなたを連れ出す手筈を整えたのだ」
「そうだったのですね。何から何まで、本当にありがとうございます」

 母が世界各地で人々を魅了したからこそ、今自分はこうして生きている――。

 時を越えて亡き母に救われたこと。
 皇帝が、自分に思いを寄せ続けてくれて、尽力してくれたこと。
 胸が熱くなったノツィーリアは、自分を抱き締めるようにして胸の上で両手を重ねた。
 ルジェレクス皇帝の赤い輝きを放つ瞳を一心に見上げて、心の底からの笑みを浮かべてみせる。

「ルジェレクス皇帝陛下。わたくしめに御心を砕いてくださったこと、いくら感謝してもしきれません」
「ノツィーリア姫……!」

 顎をすくわれる。
 唇が近づいてくる。
 あふれる想いに任せて口付けを受け入れようとした、その瞬間。


「ほ~ら陛下、寝室に転移して正解だったでしょお~?」
「!?」
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