レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
予期せぬ呼び掛けに、びくりと肩が跳ねる。震え上がったノツィーリアが声の方を見ると、そこには魔導師が立っていた――わけではなく、空中に横たわっていた。まるで見えないハンモックに寝そべるかのような姿勢で肘枕をしている。
突然の訪問者に驚いたノツィーリアは、慌ててガウンの前を重ね合わせて肌を隠した。
一方で、皇帝が髪を掻き上げて、ため息をつく。
「まったく貴様は……。やはり『複数人をまとめて飛ばす転移魔法は同じ環境である方がやりやすい』というのは虚言であったか。貴様ほどの力があって、たかだか四人程度を同時に飛ばす魔法に労するはずもなかろうに」
「な~にをおっしゃいますやら。やりやすいのは本当ですけど~?」
皇帝は、魔導師の方に視線をやることもなく水瓶を傾けてグラスに水を注ぎ、それをひと息で呷った。唐突な臣下の訪問に別段驚いた様子もなく、口付けを中断させられたことをとがめもしない。
魔導師がそこにいるのがわかっていたかのような皇帝の態度に、ノツィーリアは衝撃を受けずにはいられなかった。
「慣れていらっしゃる……?」
「こやつには自由を許しておるのでな。神出鬼没で申し訳ない」
皇帝の自室であっても自由に出入りが許されている――。ある可能性に思い至れば、つい声が大きくなってしまう。
「あの、魔導師様は、もしかしてずっとそこにいらっしゃったのでしょうか!?」
「いやぁさすがに~? そこまでの報酬は身に余ります~」
「心にもないことを言いおって」
皇帝のあきれ声にも悪びれずに軽々と床に降り立った魔導師が、ノツィーリアを見てにっこりと口元を微笑ませる。目は元々笑った形であるせいか、その笑顔が本気か冗談かがさっぱり読み取れない。
ノツィーリアが魔導師の顔をじっと見つめるうちに、ふと残念そうな表情に変わった。
突然の訪問者に驚いたノツィーリアは、慌ててガウンの前を重ね合わせて肌を隠した。
一方で、皇帝が髪を掻き上げて、ため息をつく。
「まったく貴様は……。やはり『複数人をまとめて飛ばす転移魔法は同じ環境である方がやりやすい』というのは虚言であったか。貴様ほどの力があって、たかだか四人程度を同時に飛ばす魔法に労するはずもなかろうに」
「な~にをおっしゃいますやら。やりやすいのは本当ですけど~?」
皇帝は、魔導師の方に視線をやることもなく水瓶を傾けてグラスに水を注ぎ、それをひと息で呷った。唐突な臣下の訪問に別段驚いた様子もなく、口付けを中断させられたことをとがめもしない。
魔導師がそこにいるのがわかっていたかのような皇帝の態度に、ノツィーリアは衝撃を受けずにはいられなかった。
「慣れていらっしゃる……?」
「こやつには自由を許しておるのでな。神出鬼没で申し訳ない」
皇帝の自室であっても自由に出入りが許されている――。ある可能性に思い至れば、つい声が大きくなってしまう。
「あの、魔導師様は、もしかしてずっとそこにいらっしゃったのでしょうか!?」
「いやぁさすがに~? そこまでの報酬は身に余ります~」
「心にもないことを言いおって」
皇帝のあきれ声にも悪びれずに軽々と床に降り立った魔導師が、ノツィーリアを見てにっこりと口元を微笑ませる。目は元々笑った形であるせいか、その笑顔が本気か冗談かがさっぱり読み取れない。
ノツィーリアが魔導師の顔をじっと見つめるうちに、ふと残念そうな表情に変わった。