仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜

7.仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい



「あず姉」
「……」
「あず姉ってば!」
「うえっ!? 何?」


 杏葉はビクッとして顔を上げる。
 目の前にはフルーツタルトを食べながら怪訝そうに姉を見つめる柚葉がいた。


「どうしたの? なんかぼーっとしてない?」
「え、そう?」
「フルーツタルト全然減ってないじゃん」


 確かにフルーツタルトは一口食べてから進んでいない。


「ああ、ちょっと疲れてるのかも……」

「大丈夫? あず姉、昔から無理するところあるんだから」

「うん大丈夫、ありがとう」

「もしかしてお義兄さんとなんかあった?」

「えっ!?」


 思わず二口目のタルトを咽せそうになった。


「なんで!?」
「別に何となく」
「何もないよ……」
「喧嘩でもして落ち込んでるのかと思った」
「……」


 流石は妹、勘が鋭い。
 さっさとフルーツタルトを食べ終え、皿とフォークを机に置いた柚葉は改めて杏葉を見つめる。


「ねぇあず姉、本当はお義兄さん…淡雪先生と付き合ってなかったんでしょ?」

「ち、違うよ」

「もうわかるよ。これでもあず姉の妹なんだから」

「……」

「やっぱり私のためだったの?」

「そうだけど、自分のためでもあったよ。アズハが結婚したらイメージアップになるし、相手がイケメン外科医なら尚更良い。もちろん柚葉の怪我を治してもらうためでもあったけど、この結婚は私にとってもメリットは大きかったの」


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