嘘からはじまる恋のデッサン
※※

私は今日も窓から吹き込む春風に心地よさを感じながら鉛筆を握りしめる。そして今日もミケランジェロそっちのけで貴方を見ながら淡い恋心をデッサンする。

「こら、マサ……春野さん、今日のデッサンはミケランジェロだぞ」

見上げれば私の真横にはいつのまにか俊哉が立っていて私を見て困ったような顔をしている。

(あ、ラッキー)

私は至近距離から俊哉の柔らかそうな髪の毛に視線をさっと移すと、脳内で記憶してすぐにまたキャンバスに向かって黒髪を描いていく。

「聞いてるのか?」

「はいっ! 頑張って私なりにミケランジェロ描いてるところです」

そう言って私が舌を出せば、俊哉が柔らかい黒髪をガシガシと掻いた。

「やれやれ。困ったな」

私は私のことで困る俊哉の顔も大好きだ。

いつかこのデッサンに貴方の心が映って私の心が乗っかって、やがて命が宿ることを密かに願いながら、私はずっとずっと恋するデッサンし続けるから。

──ね、俊哉センセ。






2023.1.26 遊野煌
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