名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
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「雛未さん、今日はご機嫌ですね?」
「そ、そう?」
雛未は浮かれた心を誤魔化すように、コホンとひとつ咳払いをした。
(もしかしてにやけてた?)
近頃の雛未はスケジュールアプリに打ち込まれた『花火見物』の文字を見るたびに、ウキウキと心が弾むようになっていた。
仕事中も知らず知らずのうちに表情筋が緩んでしまっていたのかもしれない。
頬を強めに叩いてみるが、効果はあまり感じられない。
(ダメダメ!しっかりしなきゃ!)
仕事中にも関わらず、他のことに気を取られて上の空なんてよろしくない。
そもそも、花火見物に行くのは二人が夫婦だという証拠固めの一環だ。そこに意味はない。
嬉しいも、楽しいも存在してはいけない感情のはずなのに。心臓よ、なぜ高鳴る。
「何かいいことあったんでしょう!教えてくださいよー!」
面白そうな気配を鋭敏に察知した茉莉が、すかさず首を突っ込んでくる。
話すつもりは一切なかったのに、茉莉はしつこく食い下がった。
午前中、散々粘られた結果、雛未は花火見物に出向く事のあらましを説明させられた。
「ブルームーンホテルで花火デート!うわあ!最高じゃないですか!」
「あ、うん。結構なものをいただいちゃって本当に恐縮だよね」
花火大会当日の宿泊予約が始まると、ブルームーンホテルの予約ページにはアクセスが殺到し、電話もまともに繋がらなくなるらしい。
いくら聖がベリが丘近隣に強いコネクションを持っていても、競争倍率数倍の花火大会のインビテーションカードを手に入れるまでには相当な手間がかかっただろう。
それをこうもあっさりプレゼントされるとは。
金持ちの感覚は雛未には一生理解できそうにない。