名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「当病院の職員が何か不手際を?」

 男性は口を噤んで答えようとしなかった。
 祐飛は怒鳴られた理由を話せと、雛未に目くばせを送ってきた。

「明日の面会予約が取れていらっしゃらなかったようです。面会予約は三日前までに行う決まりだと、ご説明したところ……」

 かいつまんで説明すると、祐飛はもう一度男性に向き直った。
 
「特別室のシステムにご不満があるようでしたら、一般病棟に移るか、別の病院をご紹介いたします」
「あ、いや……。そこまでは望んでいない」

 一見して医者だとわかる祐飛に威圧され、男性は態度を改め、そそくさと退散して行った。
 男性の姿がエレベーターの中に消えると、祐飛は険しい表情で雛未に注意した。

「ああいう人間にひとりで対処しようとするな」
「あ、あの……」
「次からは困ったら事務長を呼べ」

 祐飛は先ほど男性に掴まれ乱れてしまった雛未の髪を指で梳いた。
 ぷつりと途中で切れた髪が数本指からこぼれ落ちていき、顔を顰める。

「……出禁にしてやればよかった」

 忌々しげに吐かれた毒のある台詞は本気がどうかわからないが、雛未の髪を惜しんでくれたのは確かだった。
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