名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

 ◇

 例年よりも一週間ほど遅めに梅雨明けが発表された、七月某日のこと。

 花火大会当日を迎えたこの日は朝から快晴で、雲ひとつない絶好の花火日和になった。

 日曜日で仕事が休みだった雛未は茉莉に言われた通り、十六時に熊谷呉服店にやって来た。

「うわあ……。すごい数……!」
「どれにします?」

 入口の反対側から店舗の中に通された雛未は、六畳ほどの和室には所狭しと並べられた浴衣に驚かされた。

「本当に借りていいの?」
「全然かまいませんよ!今はやめちゃったんですけど、昔は浴衣の貸し出しもしてたんで、種類だけは沢山あるんです」
 
 茉莉は和室に並べられていた浴衣以外にも、店の奥から、あれこれと浴衣を出してきては、どれが似合いそうか雛未にあてがってくれた。

「うん。やっぱりこの柄にしようかな」

 どれを着せてもらうか悩んだ末に、雛未が選んだのは白地に緑の菊文様が描かれた浴衣だった。

「いいですね!きっと似合うと思います。この色なら帯は同系色よりも、反対色の赤が良いかな?」

 茉莉は帯だけではなく浴衣に合わせるようにバッグと下駄を持ってきて、せっせとコーディーネートしてくれた。
 繁忙期には店の手伝いに駆り出されているとあって、茉莉は和装の取り扱いに慣れていた。
 幼少期から習わされていたそうで、着付けもひと通りできるという。病院のアテンド職員をしているのが、もったいないくらいだが、病院で働く方が実入りがいいんだそうで。

< 109 / 190 >

この作品をシェア

pagetop