名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「わからない……」
雛未は降参と言わんばかりにテーブルに突っ伏した。
手紙を読もうと思ったのはほんの出来心。故人の秘密を暴く気持ちなど一切なかった。
雛未は興味本位で手紙を紐解いたことを後悔し始めていた。
そして、雛未が頭を抱えるもうひとつの原因は……。
(つい最近、聞いたような気がするんだよなあ……)
困ったことに、この手紙を読むまで父親の名前すら知らなかったのに、『若狭國治』という名前に聞き覚えがあるのだ。
しかし、どこで聞いたのかどうしても思い出せない。
奥歯に何かが挟まっているような、喉に魚の小骨が刺さったような、何ともいえない不快感だ。
(いつまでも休んでいる場合じゃないか)
雛未は椅子から立ち上がり、客間の片づけを再開した。
けれど、夕飯を食べ、風呂に入り終わっても、一度抱いた違和感はどうやっても消えなかった。
(思い出せないとなんかモヤモヤするう……!)
雛未は大声で叫び出したい衝動に駆られた。しかし、いくら悩んだところで思い出せないものは、思い出せない。