名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「はい、完成。雛未さん、浴衣が似合いますね~」
「ありがとう、茉莉さん」
見事な出来栄えに雛未はお礼を言った。
姿見の前には、美しく装った大和撫子がひとり立っていた。
茉莉が背を向けている間に、こっそり姿見でうなじを確認する。
祐飛につけられた痕は無事、衿の中に隠れたようでホッとしたその時、スマホが着信を知らせた。
電話を掛けてきたのは祐飛だった。
(もう着いたのかな?)
雛未と同じく休日の祐飛は着付けが終わる時間に合わせて、ここまで車で迎えに来てくれると申し出てくれた。下駄は歩きづらいのでありがたい。
「もしもし」
『悪い、雛未。病院から呼び出しがかかった』
電話をとると開口一番で謝罪され、雛未はしばし固まった。
「え、ああ……。わかりました。お仕事頑張ってくださいね」
声援を送り電話を切った後、自分でも露骨にテンションが下がっていくのが分かった。
「どうしました?」
「ううん。なんでもない。浴衣、貸してくれてありがとう」
「和装をご用命の際はぜひ『熊谷呉服店』までよろしくお願いします!私にもマージンが入るんで!」
ちゃっかり宣伝するなんて、本当に抜け目がなくて商い上手だ。
商魂逞しい茉莉にクスリと笑うと雛未は荷物を入れたバッグを自分の肩に掛けた。