名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
財産分与も、慰謝料も必要ない。
離婚届はあとから郵送することにした。今はただ、ここから速やかに消えてしまいたい。
荷造りを終えた雛未は、リビングに設置されているコンシェルジュサービス直通の受話器を手に取った。
「すみません。タクシーを一台呼んでいただけますか?はい、ベリが丘駅まで行きたいんです」
呼んでもらったタクシーに乗り、ベリが丘駅に到着すると、窓口で空港行きの特急券を買った。
航空券はタクシーの中で手続きを済ませておいた。値段に糸目をつけず、今から搭乗可能で故郷まで最短で帰れるチケットだ。
空港直行の特急列車は二十分に出発する予定だった。
雛未は重たいスーツケースを転がし、指定された座席のある先頭車両のエリアまで長いプラットホームを歩いた。
やっとの思いでベンチまで辿り着くと、ゆっくりと腰を下ろしていく。
平日昼間のベリが丘駅、特急列車専用のプラットホームは閑散としていた。
吹きさらしのプラットホームからは海が見えた。水面がキラキラと反射していて綺麗だった。
頬を撫でる風に冷たいものが混じっている。
雛未がこの街にやって来た時には桜が咲いていたが、十月の初めの今は銀杏の葉が黄色く色づき始めていた。
季節はすっかり秋になっていた。