名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

(あっという間だったなあ……)

 特急列車を待つ間、この半年間の出来事が走馬灯のように頭の中に浮かんでは消えていった。
 すべては、押入れに隠されていた手紙を紐解いたことから始まった――。
 
 テレビで若狭國治の正体を知り、ベリが丘病院を訪れ、祐飛と知り合った。
 特別室へ潜入するために結婚までした。
 誰もが向こう見ずだと咎める行動ばかりしてきたなと、我ながら自嘲的な笑みが湧く。

(あ、れ……?)

 結婚指輪のことを急に思い出した雛未は左手の薬指に視線を落とした。
 急いでいたせいで、結婚指輪をしたまま出てきてしまっていた。
 最初は慣れない感触に戸惑っていたのに、その存在を忘れるくらいすっかり指に馴染んでいた。
 
「返さなくちゃ……!」

 慌てて指から外そうとしたが、関節に引っ掛かってしまいどうしても外せない。
 体型が変わったわけでもないのに、渾身の力を込めても指輪は外れなかった。
 まるで、離婚したくないと雛未の代わりに訴えているみたいだ。
 そう思った瞬間、ぶわっと目から涙が溢れてきた。

(祐飛さんが好きだ)

 好きで好きでたまらない。
 最初は何を考えているのかよく分からなかったのに、いつの間にか祐飛に惹かれていった。
 祐飛の不愛想は恥ずかしさの裏返しで、命令口調は強い意志の表れ。
 なにもかもが愛おしかった。
 たとえ純華の代わりだとしても離れたくなかった。

(今すぐ抱きしめて欲しい)

 そうやって祐飛のことばかり考えていたせいだろうか。

< 160 / 190 >

この作品をシェア

pagetop