名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「雛未っ……!」
どこからともなく祐飛の声が聞こえたような気がした。
走馬灯の次が幻聴とは都合が良すぎる。祐飛がベリが丘駅にいるはずがない。
諦めの悪い自分に呆れていると、なんと祐飛の声は次第に近づいてくるではないか。
「雛未!」
「ゆ、うひさん……」
雛未はプラットホームの上にある線路に跨ぐように設けられた通路、その窓から身を乗り出している祐飛の姿を捉えた。
間違いなく雛未を探している。
(なんで……!?)
雛未は祐飛に見つかれないように、通路に背を向けた。
時を同じくして空港行きの特急列車がまもなく到着するとアナウンスがされた。
(あと少し……。あと少しなのに……!)
祐飛と顔を合わせてしまったら決意が鈍りそうだった。
だから夜を待たずに出立したというのに、なぜ雛未の居場所が分かったのだろう。
幸いなことに、祐飛はまだ雛未を捕捉できていない。
まだ列車はこないのかと気を揉んでいると、耳障りなブレーキ音とともにプラットホームにようやく特急列車が滑り込んできた。
出入口の扉がゆっくりと開いていき、乗客が次々と列車に乗り込んでいく。
雛未はベンチから立ち上がり、スーツケースを転がした。