名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「雛未!」
雛未は自分を追ってきた祐飛に向かって、ありったけの力で叫んだ。
「なんで……追いかけてくるんですか!」
そう叫ぶと祐飛は雛未の手前、五メートルほどの距離で立ち止まった。
「追いかけてきたら悪いのかよ」
祐飛はまったく悪びれていない。
祐飛にとっては、逃げ出そうとする妻を追いかけるのは当たり前のことだからだ。
(なんでなのよお……)
せっかくすべてを忘れてやり直そうと決意したのに。
どうせ純華には敵わないのに、逃げ出すことすら許されないのか。
雛未はキッと顔を上げ、祐飛を真正面から見据えた。
成り行きに任せるのではなく、最後の引導は自分で渡すべきだ。
よく考えたら、雛未が祐飛にしてやれることがひとつだけあった。
「純華さんは聖さんと上手くいってないって悩んでた!きっと今なら純華さんも祐飛さんの気持ちに応えてくれる!」
恋愛に疎い雛未が好きになったくらいだ。
祐飛さえその気になれば、純華を聖から奪い返すことは十分可能だ。
略奪は褒められた行為ではないかもしれない。けれど、祐飛の優しさは、傷ついた純華の心を癒すことができると雛未は確信していた。
「純華さんの姉でもない私を代わりにする必要なんて、もうどこにもない……!」
「誰にそんなデタラメを吹き込まれた!」
祐飛は声を荒らげ、激しい怒りを露わにした。名前も知らぬ誰かを殴りかかりに行きそうな剣幕だった。