名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「貴方が雛未の父親でないのなら、弟さんにも話を聞く必要がある」

 祐飛は國治に改めて回答を迫った。
 國治は大きく息を吸い、そして吐き出した。

「……いかにも。確かに私には双子の弟がいる。おそらく、あの手紙は弟が書いたものだろう」

 國治は手紙の差出人の正体を知っていたのだ。雛未はすかさず尋ねた。
 
「なぜ隠していたんですか?」
「……『罪』を認めたくなかった」
「『罪』?」

 雛未には罪と断じることが大仰なものに思えた。

「私は君の母親が妊娠していることを知っておきながら、そのことを弟に伝えなかった」

 國治はすべてを話す覚悟を決めたのか、静かに語り出した。
 
「それこそ三十年近く昔の話だ。駅前ロータリーで演説中に突然見知らぬ妊婦から『貴方の子供を妊娠している』と言われた。本当に驚いたよ。身に覚えがなかったからね。そう伝えると彼女は私に食い下がり、最後にはスタッフに引き剥がされていった。後になって弟と私を間違えたのだと気づいた」

 國治に話しかけた妊婦は、間違いなく雛未の母だろう。
 身重の身体でなんて無茶をするのか。
 演説中に突撃するなんて、後先考えずに行動するところが雛未とそっくりだった。

「なぜ、弟さんに伝えなかったんです?」
「……魔が差したとしか言いようがない。当時の私は議員一年目で各方面からのプレッシャーで押しつぶされそうだった。世間からは世襲議員と蔑まれ、古参の議員には若造だとあなどられる。若狭家を出て自由に生きる弟への当てつけのつもりだったのかもしれない」

 國治は取り返しのつかない過ちを犯してしまったと、過去の出来事を悔いていた。

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