名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「そして私はまた懲りずに、同じ罪を重ねようとした。本当に愚かだった……」
副総理という大役を務め上げる胆力を持ちながら、國治は実の弟への罪悪感に怯えていた。
手紙を携え父親を訪ねてきた雛未のこともまた、逃れられぬ過去からの使者だと思い、生きた心地がしなかっただろう。
「弟さんは今どちらに?」
「わからない。些細なことで大喧嘩をしてから、かれこれ二十年以上は会っていない。ただ、聖くん。抜け目のない君のことだ。弟の居所は既に調べてあるんだろう?」
「はい、お義父さん」
「私が言うのもおこがましいが、弟に会ってやって欲しい。私にできる罪滅ぼしといえば、もうそれくらいしか残されていない……」
雛未はその言葉に、國治の心中を察した。
(本当は弟さんとの仲直りしたいんだ)
過去の過ちが弟に知られてしまったら、二人の不和はより決定的なものになる。
だから國治は雛未の存在を、知らぬ存ぜぬで通そうとした。
……罪に罪を重ねる行為だと自分でもわかっていながら。
聖から國治の弟の住所を教えてもらった雛未は、最後に國治に向かってこう言った。
「私は父親がいなくても十分幸せでした。不幸だと決めつけないでください」
「本当にすまなかった……」
國治はゆっくりと目を伏せると、静かに謝罪した。