名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
旅立ちの朝、雛未は最後に、携えていくスーツケースの中を点検していた。
「えーっと……。忘れ物はないよね」
点検を終えると、蓋を閉じ鍵をかける。
次にスーツケースを開けるのは、ベリが丘に到着してからになる。
「少しの間だけ……この家ともお別れだね」
雛未は一時の別れを惜しみ、そっと呟いた。
この結婚は期間限定。
真実を明らかにし、名ばかりの妻としての役目を果たしたら、いずれはこの家に帰ってくるつもりだった。
雛未が留守にしている間、三十年来の付き合いがある隣人が定期的に家のメンテナンスをすると約束してくれた。
心置きなくこの家から離れていけるが、それでも寂しさは募る。
雛未は決意と覚悟を持って、生まれ育った家を出発した。
飛行機の中では、ずっと窓の外を眺めていた。
無事に空港に到着すると、前回同様ベリが丘行きの特急列車に乗った。
街まで乗り換えなしで行ける便利な立地も、ハイクラスの人々から愛される所以なのだろう。
ベリが丘駅のロータリーに降り立つと、雛未は祐飛の姿はどこかとあちこち視線を巡らせた。