名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
指輪を買った後は櫻坂にある会員制オーベルジュへ連れて行かれた。
『フランボワーズ』という可愛らしい名前のオーベルジュは、この地が『ベリが丘』と名づけられた頃からあるという。
「予約した不破だ」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
二人が案内されたのは庭園がよく見える、テラス側の席だった。
木が鬱蒼と生い茂る庭園からは、街中とは思えないほど濃い湿った土の匂いがして、里心がくすぐられた。
アンティークのランプシェードが作り出す温かみのある陰影は、アール・ヌーヴォー調の内装と相まって不思議な安らぎをもたらした。
クロスが敷かれたテーブルにも、キャンドルが灯されており、ゆらゆらと炎が揺れていた。
夕食を取るとだけしか聞いていなかった雛未は、ロマンチックな雰囲気にたじろいだ。
「あの……いいんですか?こんな素敵なところで……」
「一応、結婚記念日だろ」
雛未は祐飛の言葉に目を見張った。
一応、結婚を祝う気持ちがあるらしい。
(……変なの)
この結婚は形式的なものだし、祝う必要はないはずだ。
それでも、わざわざ手間をかけて祝いの席を用意してもらえたことは嬉しかった。