名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「雛未さーん!」
エントランスまで行くと、純華はわざわざ車から降りて雛未を待っていた。
「迎えにきてくれてありがとう」
「こちらこそ!私、今日をずっと楽しみしていたんです!」
さあどうぞと乗るようにすすめられたのは、いつぞや車体を拝見した運転手つきの黒塗りのセダンだ。
後部座席に乗り込むと、車がエントランスから出発していく。
若狭邸はベリが丘の中でも最も格式高いノースエリアにある。
小高い壁に囲われた内側に住めるのは、日本の中でもほんのひと握りの富裕層だけ。
その警備は厳しく、櫻坂を上りきった先にあるノースエリアのゲートには、昼夜問わず守衛が立っており、住民と関係者以外の出入りを監視している。
雛未達を乗せた車はまもなくノースエリアのゲートへと到着した。
運転手が許可証を提示すると、いかつい守衛が門扉を開けていく。
車がゲートを通過すると、キイっと錆びついた金属が擦れる甲高い音がして、ゲートが背後で閉じていった。
世界が隔たれると、雛未はごくりと生唾をのんだ。
車はノースエリアの中をひた走っていく。
ノースエリアに初めて入った雛未は、窓の外の景色に目が釘づけになった。
どこを眺めても、見渡す限り豪邸ばかり。
それも、もともと雛未が暮らしていた一軒家よりも、はるかに大きい家ばかりだった。