まどろみ3秒前
その時だった。
―ぐちゃ、と土を踏む音が聞こえた。
誰か、来たらしい。やばい、逃げなきゃ。
予想外のことに私は涙を拭って、立ち上がる。逃げようとした瞬間のことだった。
手首を掴まれる。
その手は、とても冷たい。この感触に、どこか覚えがあった。体が、覚えていたんだ。
ま、まさか…
恐る恐ると振り返ると、木漏れ日に照らされた、ある人が昨日と同じ制服で立っていた。
「翠さん、おはよ」
「よ、夜野さ…なんで…っ」
彼は、不気味に優しく笑った。
私は、しばらくポカンと彼を見つめる。
「あ、俺は下の名前とかでいいですよ?アサは、もう朝になっちゃうけど」
逃げようとしたけど、手首をぎゅっと掴まれている。もう、なんだか怖かった。
「そんなに怖がんなくていいのに」
「なっ…な、なんでいるんですか」
「まあ、不法侵入した」
当然のように言う彼に、私は「やばいやつじゃんそれ…」と呟く。なんだ、この学校の生徒ではないらしい。
「あー、一応内緒で」
「…はい……いやでもどうやって…」
「この学校の柵、ひょって飛び越えてみたら、意外といけたんで。ちょっと探してたら、運良くひとりでいる翠さんを見つけて」
「…じゃあ昨日の手紙、どうやって机の中に入れたんですか?もしかして今みたいに…」
「不法侵入」
はぁ…私はため息のような息を吐きながら頷く。私はベンチに腰を下ろした。