まどろみ3秒前

「座ら、ないんですか」


立っている彼に聞くと、「俺、潔癖症なんで」と意味不明なことを言って首を振った。

なんだか、ベンチに軽々と座る私が清潔じゃないみたいな言い方にされているのが、どうにも気に食わないのだが。


「…あの、別に昨日のこと気にしてないし、恨みを晴らしに来たとかそんなことじゃないんで。安心してほしいんだけど、」


昨日は、助けてくれたのに、偽善者だの色々と言ってしまったことを思い出す。

謝ろうと思ったが、今更、無駄かな。正直、私はまだ、偽善者と思っている。謝る意味なんてない。この人のことが、今も嫌いだ。


「ちょっと、言いたいことあって来ました」


彼は私の前にしゃがむ。すぐ前に彼の顔があり、目をそらして迷う視線は地面に落ちた。


「あれ、翠さんまた泣いてたの」

「泣いてないです」


また、なんて言い方も気に食わない。何も、考えてないんだろう。これだから苦しいことも何もなく考えずに生きていける偽善者は。
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