まどろみ3秒前

夢を叶える?私に叶えてほしい夢?

意味がわからない。

不法侵入までして、私に、叶えてほしい夢?こんな情けない、笑うしかできない私には、心も空っぽで何もないのに。


見つけないでよ。私を、放っといてよ…


「夢の手伝いなら、私じゃなくていい」


彼はよっと立ち上がって、何故か、確認するように校舎の上の方を見上げる。


それから、私の隣に腰を下ろす。

潔癖症とか言ってたのに、なんなの…?


ふわりと、雨の匂いがした。彼の匂いなのか、それとも、雨上がりの匂いなのか。



「俺は、あなたじゃないといけないんです」



声色、そして向ける目の色が、変わった。


彼は、猫を被っている。

元々低い声だったけど、更に低く、どこかクールで大人な男子の雰囲気を出し始める。

目付きも、真っ直ぐな目に変わる。

私は思った。これが、彼の技?

今まで、こんな綺麗な顔と、低くて色気のある声で沢山の女性や人を、陥れてきたの?


私は騙されたりしない。猫被りだってことはわかっていたはずなのに、それなのに、まるで、告白されるようなドキドキとした感覚が胸にあった。


私じゃなきゃだめなことなんて、この世にあったのか、なんて、どこか不思議で嬉しかった。


うん、それだけだ。

だから、このドキドキは、何を言われるかわからない怖い方の胸鳴りだ。

決して、下心なんてもんじゃないから。


彼の目は、茶色く透き通っていて、綺麗。

でも今この瞬間、その奥が見えた気がした。

光も何もなく、ただ、私が映っている。


「…なに?」


笑みを張り付けて、少し彼との間をとるように体を、ベンチの端に動かした。

彼は天を仰ぐように空を見上げた。


「俺と、崩壊しよ?」

「…え?」


耳を疑い、思わず聞き返してしまった。
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