まどろみ3秒前

「俺は、好きな人と死ぬのが夢なんです。だから、死にたいんなら、一緒に死のう?」


しばらく私は、呆然と口を開けて、彼の言った言葉をリピートしていた。何度か、鳥が鳴く声がして飛行機が通った。


ベンチから立ち上がろうとしても、足がすくんで立ち上がれない。

ようやく、私に向けられた言葉だと気付いた。私の足は小刻みに震えていた。


「翠さんと死ぬのが俺の夢だから」

「待って、どういうこと…」

「そのためならなんだってするから」


彼は、私との距離を小さくする。


「翠さん」


親指と人差し指でむにゅ、と私の頬を挟んで掴まれる。


「…ひゃっ…」


意味不明、意味不明…無理無理…意味不明…

なにも考えないようにしていた私の頭は、突如として入ってきた「一緒に」「死のう」の単語の言葉で混乱状態に陥る。

嬉しくもなく苦しくもなく意味のわからない、初めて味わう変な感覚のものだった。


―キーンコーンカーンコーン…


その時、校舎からチャイムが鳴った。
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